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院長コラム『Dr.原口のご存じですか?』

“消したい傷あと”形成外科的に勧める傷あとの修正 ~肥厚性瘢痕・ケロイドについて~

傷あとの診断はとても重要です。
ケロイドの診断と治療は簡単とは言えません。
 ケガや手術の傷あとを見て「ケロイドになってしまった」と思いこんだり、「ケロイドです」と診断されることがあります。実際には医学的な本当の意味でのケロイド(真性ケロイドと言います)であることは少なく、多くは「肥厚性瘢痕」という状態です。この「ケロイド」と「肥厚性瘢痕」には共通点が多く、見た目は似ていますが、治療の難易度は変わります。「肥厚性瘢痕」は手術を行うことで解決することができる場合が多いです。一方、「ケロイド」は体質が関係しているため、薬物治療の効果も少なく、手術後の再発率が高いため、治療が難しく長期間の治療が必要になります。「ケロイド」と「肥厚性瘢痕」の鑑別には経験が必要ですので、赤く盛り上がった傷あとが気になる場合はお気軽に形成外科専門医にご相談ください。

特徴的なケロイドの症例

  • 赤く盛り上がっている

  • 痛みやかゆみ、ひきつれを起こすことがある

  • 耳や肩、ひじ、膝などの関節、前胸部、下腹部などにできやすい

  • 皮膚の緊張が強い若年者にできやすい

  • 人種差がある(肌の色が白いほどできにくく、黒いほどできやすい)

  • 傷をふさぐための「線維組織」が増殖している(病理検査では区別が難しい)



「肥厚性瘢痕」と「ケロイド」の違い
 病理組織学的に区別が困難であること、「肥厚性瘢痕」と「ケロイド」が混在することがあることから、違いはないという学説もあります。しかしながら、特性に違いがあることも事実で、「肥厚性瘢痕」は傷あとの部分のみに限定しており、長く経過をみていくと自然に改善していきます。「ケロイド」は傷あとの部分から広がっていき、治療に対する反応に乏しく、自然に改善しないばかりか、手術を行っても再発しやすいという違いがあります。

「肥厚性瘢痕」と「ケロイド」の治療
手術以外の治療と手術の選択について
 治療には「手術以外の治療(保存的治療)」と「手術治療」があります。「肥厚性瘢痕」や「ケロイド」の治療には、唯一絶対の治療方法がなく、体質や大きさ、症状などに合わせて治療法を組み合わせる必要があります。そのため、専門医とよく相談して、自分に合った治療法を選び、取り組んでいくことが重要です。

手術以外の治療(保存的治療)について
 手術以外の治療方法の目的は傷にかかる負荷を軽減させることと、赤く盛り上がる反応を抑えることがポイントになります。治療が進むと赤み、痒み、痛みなどの症状が改善し、平たくなっていきます。平たくなる際に、傷あとは柔らかく伸びていくため、傷あとの幅が広くなります。

  1. 内服治療
     主にかゆみなどの症状を改善する目的でトラニラストの内服を行います。手術後の再発予防としても内服を行うことがあります。
  2. 外用治療
     炎症と線維芽細胞の増殖を抑える目的でステロイド剤を含んだテープや軟膏を塗布します。ステロイド剤を含んだテープを使用する際には正常の部分に貼らないように注意する必要があります。
  3. 局所注射療法
     ステロイド剤を直接注入する治療法です。保存的治療の中ではもっとも効果が高く、即効性も期待できます。硬い傷あとに直接注入するため、やや痛みがあることが難点と言えます。
  4. 圧迫治療
     物理的に圧迫して隆起を防ぎ、局所血流を減らして線維芽細胞の増殖を防ぐ効果があるとされています。テープやスポンジ、シリコンゲルシートなどが使用されます。
  5. 放射線治療
     放射線や電子線などを照射して線維芽細胞の増殖を抑える治療です。手術治療と組み合わせて行い、特に術後早期に行うと再発率が下がるという報告があります。治療ができる施設が限定されること、照射部位に色素沈着などの放射線治療の晩期障害を起こす可能性があることなどの注意が必要です。

手術治療について
 赤く盛り上がり、ひきつれている部分を切除して縫い合わせます。皮膚の深層まで傷跡の組織が存在するため、切り開いて皮膚にかかる緊張を直接緩和することができます。緊張を緩和すると大きな皮膚欠損となり、単純に縫合できない場合は皮弁や皮膚移植などの治療が必要になることがあります。
 手術治療には再発の問題があります。手術の傷あとがケロイドになり、治療前よりもさらに大きなケロイドになることがあるため、適応は慎重に選択する必要があります。手術後は再発率を下げるために保存的治療を組み合わせて行います。
 ケロイド内部に膿瘍を伴う場合や痛みが強い場合は、症状を緩和する目的でケロイドの面積を縮小する部分切除を行うこともあります。

「肥厚性瘢痕」と「ケロイド」治療のまとめ
 絶対的な治療方法がないため、保存的治療と手術治療から最も自分の状態にあった治療方法を組み合わせる必要があります。正確な診断と治療、アフターケアのために信頼できる形成外科専門医を受診することが重要と言えます。

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